頸動脈と動脈硬化

頸動脈は、大動脈から脳に血液を送る非常に大切な血管です。首の部分の頸動脈は、「内頸動脈」と、「外頸動脈」とあり、それらの分かれ道となる部分を頸動脈分岐部といい、動脈硬化になりやすい部分といわれています。

動脈硬化が進行すると、この頸動脈の血管壁にLDLコレステロールが沈着してプラークというかたまりができて溜まっていき、①血液が流れにくくなったり、②狭くなった血管壁の部分に血栓がくっついて血液の流れがとまったり、③プラークや付着した血栓がはがれて血流に乗って流れていき、脳の血管を詰まらせて脳梗塞を起こす、ことがあります。

頸動脈エコーによる検査

頸動脈部分の超音波検査「頸動脈エコー」では、頸動脈壁のプラーク（かたまり）の状態や、狭くなってしまった狭窄部分の血流の速度なども確認することができる検査です。この検査によって、動脈硬化が原因となる心筋梗塞や脳梗塞、大動脈解離などの命にかかわる病気が発症する危険度を事前に推測することができます。

頸動脈エコーは、超音波を用いており、放射線による被曝がないため、体への害はありません。痛みもなく、約10分程度（検査箇所による）で終了する簡単な検査です。

このような症状をお持ちの方に頸動脈エコーをおすすめしています。
糖尿病／脳卒中／脂質異常症／心臓病／高血圧／肥満など

検査の流れ

● 首にジェルを塗り超音波を当てて左右の血管壁の厚さを測定します。寝ているだけの簡単な検査です。

● 検査後、その場で検査結果を説明致します。検査結果および、管理栄養士との食事相談も合わせて治療方針について話し合いましょう。

頸部頸動脈狭窄症とは

頸部頸動脈狭窄症とは、脳に血液を送る頸動脈の分岐部分が動脈硬化によって狭くなる疾患のことです。頸動脈狭窄だけでは全く症状は出ませんが、脳が血流不足に陥った場合には、脳梗塞と同じで、言葉が出にくい、手足のしびれ、手足が動きにくいなどの症状が出ます。重要なことは、ほぼ40 %の方は、こういった症状が短時間（多くは1時間以内）で完全に改善することです。これは一過性脳虚血発作（TIA）と呼ばれ、脳梗塞が起こりかけている証拠なのです。また15～20 %の患者さんは、短時間の間（数分、数時間、数日以内）にどんどん症状が悪化していく経過をとります。

頭蓋内頸動脈が、最初に枝分かれする血管は目を栄養する血管です。頸部頸動脈にできた血栓がこの目の血管を詰まらせると、片側の目の上半分や下半分が暗くなる、幕が上がる、または下がるように視野が暗くなる、視力が急に低下し、ものが見えなくなる、時に眼の奥の痛みを訴えることがあります。一時的な症状で回復することがほとんどなので、一過性黒内障と呼ばれていますが、頸部頸動脈狭窄症に多い症状です。

また、頸部頸動脈狭窄症により脳の血流量が減少した場合、脳梗塞の症状以外に、立ちくらみ、揺れるようなめまい感などを訴えることもあります。

頸部頸動脈狭窄症とは

動脈エコー検査によって、血管壁のプラークの状態や狭窄の程度を調べますが、その結果は、次のような重症度で分類されます。

治療はまず内科的治療を行います。さらに、狭窄の程度が強かったり、たまったプラークがはがれやすそうだった場合には、外科的治療を追加することがすすめられます。

• 内科的治療 動脈硬化の危険因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病の治療を行い、ある程度狭窄が進行した患者さんには、さらに抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を処方します。
• 外科的治療 頸動脈内膜剥離術(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)という手術があります。

①頸動脈内膜剥離術(CEA)
全身麻酔をかけて頸部をメスで切開し、頸動脈を露出します。露出した頸動脈をさらに切開し、直接、プラークを取り除きます。

②頸動脈ステント留置術(CAS)
太ももの動脈にカテーテルを入れ、これを頸動脈の狭い部分まで通します。次に、カテーテルについている風船をふくらませて狭くなった部分を広げ、再び狭くならないように広がった所にステントという金属の筒を置きます。

頸動脈エコーで動脈硬化を早期発見しましょう

頸動脈エコーは、患者さんの負担が少ない検査ですが、大変有用な情報が得られます。高血圧や糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームなど動脈硬化のリスクが高い方は、一度、検査を受けておくことをおすすめします。動脈硬化の程度を早めに知っておくことで、命にかかわる病気を予防することにつながります。