心筋梗塞とは

心筋梗塞とは、心臓に酸素と栄養分を運ぶ冠動脈が詰まって血液が流れなくなり、心筋（心臓の筋肉）の一部が壊死する病気です。

心筋は、3本の冠動脈が運ぶ酸素と栄養分によって動いています。3本の冠動脈のうちいずれかが詰まってしまうと、詰まった先にある心筋は、酸素と栄養分が届かず壊死してしまいます。すると、心臓から充分な血液が全身に送り出せなくなり、迅速に治療しないと死に至る恐れがあるのです。

心筋梗塞の原因

心筋梗塞が起こるほとんどの原因は動脈硬化です。高血圧や脂質の過剰摂取などさまざまな要因が積み重なると、血管が柔軟性を失い、硬くなってしまいます。これを動脈硬化と言います。動脈硬化が進むと、血管の壁が次第に厚くなり、血管の内径が狭くなります。

心筋梗塞は、その動脈硬化の進んだ血管壁の内側に脂質（脂肪分）が入り込むことで発症します。まず、ＬＤＬコレステロール（悪玉コレステロール）が血液中に増えすぎると、傷のついた内皮細胞のすき間からＬＤＬコレステロールが血管壁の内側に入り込みます。続いて、それを退治しようとする免疫細胞や、その他の細胞も入り込むため、血管壁にアテロームと呼ばれる脂質の塊ができ、プラークとなって膨れ上がります。このプラークが破裂すると、そこに急速に血の塊（血栓）ができ、血管が塞がれて詰まってしまいます。これが心筋梗塞です。

血流が止まってから約20分で心臓の壊死が始まる

心筋細胞の壊死は血流が止まってから約20分で始まります。発作後、安静にしても激しい胸痛が20分以上続くときは心筋梗塞の可能性が高いといえます。細胞が壊死すると二度と元の状態には戻りません。一刻を争いますので迅速な処置が必要です。

心筋梗塞の症状

心筋梗塞を起こすと、多くの場合は激しい胸の痛みを感じます。「焼けるような感じ」「圧迫される感じ」などと表現する人もいますし、胸ではなく背中やみぞおち、肩やのど、歯などに痛みを感じる人もいるようです。急性心筋梗塞症ではふつう30分以上の痛みや圧迫感が続き、安静にしたり、ニトログリセリンを服用したりしても治まらず、冷汗や吐き気、めまいや失神、呼吸困難の症状が出ることもあります。

一方で、特に糖尿病の方や高齢の方では、ほとんど症状がなく、「知らないうちに心筋梗塞を起こしていた」というケースもあるので要注意です。

心筋梗塞の検査と診断

心筋梗塞は一刻を争う病気なので、初期治療と並行して検査が行われることになります。

• 血液検査 血中に含まれる酵素の有無を調べる。
  心筋が壊死すると、血液中に特有の酵素が漏れてきます。これらの量を調べることによって、心筋壊死の発生や程度を知ることができます。最近では迅速に診断できるキットも開発され、すみやかな診断が可能となっています。
• 心電図 心筋梗塞特有の波形を調べます。
• 心エコー 心筋梗塞がどの部分で起きているかを知ることができます。心筋梗塞が起こった部分では心臓の運動性が低下してしまいます。その運動性をエコーで評価してどの部分でどのくらいの梗塞が起きているのかを調べます。
• 冠動脈造影検査 冠動脈に直接造影剤を入れ、X線で透視してみることで冠動脈の狭窄・閉塞しているところを特定することができます。

心筋梗塞の治療

心筋梗塞の治療でもっとも重要なのは、発作が起きてから一刻も早く血管を広げることです。心筋梗塞の急性期治療には、現在、２つの方法があります。

①血管の詰まっている部分を血栓溶解剤で溶かす方法と、②カテーテルで拡張する方法（PCI）です。PCIでは、太ももの付け根や腕の脈をとる血管から、直径2㎜ほどの細い管を挿入し、そのなかにカテーテルを通して、血管の詰まっている部分をバルーンで押し広げます。そして、再狭窄を防ぐため、ステントと呼ばれる金属製の筒を留置するのが一般的な方法です。

発作が起きたら一刻も早く治療を

心筋梗塞発症後は、心臓の筋肉（心筋）の細胞が死んで、急激に減少します。発症後４時間以内に閉塞した血管を再開通できれば、細胞が死んでいくのを止めることができ、死亡率も減少します。つまり、最大限の治療効果を引き出すには、一刻も早く詰まった血管を再開通させることです。15分以上経験したことのない胸の痛みがあれば、迷わず医療機関を受診しましょう。その場合、遠慮せずに救急車を呼んでください。

リスクの高い人や発作を経験した人は薬で予防を

生活習慣を改善してもなお高脂血症や糖尿病、高血圧などの治療が十分でない場合、または、脳梗塞や狭心症・心筋梗塞の発作をすでに経験したことがある人は、薬による治療が必要です。抗血小板薬や抗凝固薬で血栓を防ぎます。

心筋梗塞の日常生活の注意点

動脈硬化の進行を予防することが一番大切です。

脂質異常症や糖尿病、高血圧の症状をお持ちの方はすみやかに治療に取り組みましょう。

【心筋梗塞を防ぐための生活について】

喫煙者は禁煙する
適切な体重の維持管理をする
血管にやさしい食事を意識して摂る
水分補給も忘れずに
適度な運動を習慣的に
アルコールは少量にとどめる
入浴時やトイレは気温差が生じないようにする
仕事や生活でストレスをためないように工夫する