花粉症とは

花粉が原因で引き起こされるアレルギー反応による鼻や目の症状を花粉症といいます。体の免疫反応が、花粉に過剰に反応して、さまざまな症状が現れます。例えば、体が花粉を外に出そうとするために、クシャミで吹き飛ばしたり、鼻水や涙で花粉を洗い流そうとするのです。

花粉症の原因

• スギ花粉について 花粉症の患者さんの約70％はスギ花粉が原因です。これは日本の国土に占めるスギ林の面積が大きく、全国の森林の18％、国土の12％を占めているからです。そのほかにも花粉症を引き起こす花粉は数十種類以上知られており、これらの花粉の飛散時期は地域によって違いがありますので、お住まいの地域でどんな花粉がいつごろ飛んでいるのかを知っておくと役に立ちます。最近では15歳以下の小児のスギ花粉症も増えています。また世界的な温暖化の影響でスギ花粉飛散数の増加が予想されており、今後ますます花粉症対策が必要となってくるでしょう。

花粉症の症状

• 鼻や眼にアレルギーが起こるメカニズム ヒトは細菌や微生物などから体を守るために抗体という成分を作っています。スギ花粉症の患者さんの場合は、スギ花粉に対するIgE抗体が大量に作られており、鼻や眼の粘膜にある肥満細胞と結合しています。吸い込んだ花粉が粘膜に到達すると、このIgE抗体と反応を起こし、その結果、肥満細胞からヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質が放出されます。すると、これらの物質が鼻や目の粘膜を刺激してくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血、涙目などのアレルギー反応を引き起こすのです。花粉症は原因となる花粉が飛散する時期に限ってみられます。花粉との接触が繰り返し多くなると、症状は強まります。

• 鼻や眼以外の症状 のどの症状（かゆみ、刺激感）、咳、胃腸症状（痛み、下痢）、顔などの露出部皮膚の発赤、かゆみ、さらに頭重感、頭痛などの全身症状を訴える患者さんも少なくありません。また、軽いうつ症状も数％の患者さんでみられるといった報告もあります。特に花粉飛散のピーク時にこうした鼻や眼症状以外のさまざまな合併症がみられます。

花粉症の診断

花粉飛散時の症状の有無と血液中にある花粉に対する抗体の存在で診断されます。症状が起こり始めたごく初期に治療を開始すると粘膜の炎症の進行をくい止め、早く正常化させることができるため、花粉症の重症化を防ぐことが出来ます。

花粉症の治療

花粉症の治療は他の鼻や眼のアレルギーの治療と基本的には同じですが、急激に花粉にさらされて急性の強い症状が起こる場合への配慮も必要となります。治療法は大きく分けて、症状を軽減する対症療法と根本的に治す根治療法の２つがあります。

• 1） 対症療法

  　・ 内服薬による全身療法
  　・ 点眼、点鼻薬などによる局所療法
  　・ レーザーなどによる手術療法
  2） 根治療法

  　・ 原因抗原（花粉など）の除去と回避
  　・ 減感作療法（抗原特異的免疫療法）

花粉症の治療薬

• 抗ヒスタミン薬 くしゃみや鼻汁に即効性はあるが、鼻づまりには効果が薄い。眠気や口渇を伴うものがある。
• 化学伝達物質遊離抑制剤、Th2サイトカイン阻害薬 効果が出るのに数日～2週間と時間がかかる。鼻づまりにもやや効果あり。眠気や口渇はない。
• 抗ロイコトリエン薬、抗トロンボキサン薬 鼻づまりに特に効果が高いが、効果が出るのに数日～4週間と時間がかかる。
• 点鼻ステロイド薬 強力で鼻づまり、くしゃみ、鼻汁に有効。刺激になることがある。
• 漢方薬 効果はマイルドで効きはじめまで数日は必要。一方、著しく効果の出る患者さんもいる。
  これらの薬剤を上手に使い分ければ、花粉が多い年でも約5～6割の患者さんが大きな副作用もなく、花粉症の症状がほとんど出現せずに過ごせることがわかっています。花粉症が疑われる場合は早めに医師にご相談ください。

根治を目指すスギ花粉症の減感作療法薬（アレルゲン免疫療法薬）について

スギ花粉症の減感作療法薬（アレルゲン免疫療法薬）とは、スギ花粉を原料としたエキスを含む薬剤を少量から投与し、身体を花粉に慣らす（花粉に対し防御する免疫を獲得する）ようにさせる方法です。従来は外来通院で注射による治療が主でしたが、最近では舌下で薬剤を吸収させる舌下減感作療法が自宅で行えるため広がっています。