動悸とは

動悸は、普段は感じることのない心臓の拍動やその乱れを感じる状態です。例えば、心臓の鼓動を強く感じたり、心臓の動きを速く感じたり、脈の感覚が不規則に感じたりする不快な症状をいいます。「胸がドキドキする」「一回だけドキッと拍動を感じる」「心臓が口から飛び出しそう」など、患者さんによってさまざまな症状がみられます。

動悸を感じるのは、必ずしも心臓病などの病気によるものばかりでなく、健康な方であっても労作や運動、あるいは精神的ストレスによって動悸を自覚することがあります。

動悸の原因

動悸は病気が原因で起こるものと、病気以外の原因で起こるものに大きく分けられます。

動悸の原因となる主な疾患

動悸の多くは心臓病が原因で起こりますが、若い女性に多いバセドウ病（甲状腺機能亢進症）やうつ病などの精神疾患、女性の更年期障害、妊娠中などホルモンバランスが急激に変化したとき、などに動悸の症状が起きることがあります。

• 心臓に原因がある病気 心不全
  弁膜症
  肥大型/拡張型心筋症
  不整脈（心房細動・心房粗動・発作性上室性頻拍・期外収縮・徐脈頻脈症候群など）
• 心臓以外に原因がある病気 貧血（出血・鉄欠乏性貧血・慢性骨髄性白血病など）
  甲状腺機能亢進症
  パニック障害
  低血糖症
  更年期障害

日常生活から考えられる原因

１．過剰な興奮や緊張状態（激しい労作や運動、精神的な緊張や興奮）
２．カフェインやアルコールの飲みすぎ
３．薬の副作用
４．脱水
５．睡眠不足

動悸の症状

胸（心臓）がドキドキする、胸が苦しい、息が苦しい、冷や汗がでる

警戒すべき症状と受診のタイミング

動悸がみられる場合は、特定の症状や特徴に注意が必要です。
動悸がある時の警戒すべき徴候と受診のタイミングをまとめましたので参考にしてみてください。

• 夜間・休日を問わず救急病院へ（急いで受診してください。状況によっては救急車が必要です） ・安静にしているのに、脈拍が140回／分を超えている
  ・胸痛、息苦しさ、意識が遠のく、冷や汗が出る、などの症状がある
  ・動くことができないほど激しい動悸がある
• 診療時間内に受診（翌日～近日中に受診しましょう） ・安静にしているのに、脈拍が100回／分を超えている
  ・脈が飛んだり乱れている
  ・動悸が続いている、繰り返している
• 場合によっては受診を検討しましょう ・一時的なもので、その後は繰り返さない

動悸の検査と診断

動悸を感じたときの状況を正確に伝えてください
動悸の原因を明らかにするためには、心電図検査や血液検査などを受けることも必要ですが、動悸が起こった時の状況や自覚症状、脈の様子などが原因を推測するうえで非常に役に立ちますから、動悸を感じたときは、次に挙げる項目をメモしておき、受診したときに医師に伝えてください。

動悸を感じた時のメモ

１．なにをきっかけに動悸を感じたか
２．どんな症状でどれくらいの時間続いたか
３．突然始まり突然止まるか、あるいは、徐々に始まり徐々に止まるか
４．脈拍数はどのくらいか
５．脈拍は規則正しいか、不規則か

診察と検査・診断について
診察では実際に脈をみたり、心音を聴診して、心臓の病気の可能性を判断します。血圧を測り、血液検査を行い、全身のむくみや眼瞼結膜で貧血の有無も判断します。心臓の病気が疑われる場合は、心電図で波形をみたり、超音波検査で心臓の動きや血液の逆流がないかどうかも調べます。受診時に動悸がない場合には、心電図をつけて1日過ごす24時間ホルター心電図を行うこともあります。不整脈の症状がある方も１日中、脈が乱れているかというと、そうではございません。したがってクリニックで調べているときは正常だったということを起こりえます。24時間装着するホルター心電図ではそれを防ぐことができます。
心臓以外の原因が考えられる場合は血液検査で貧血や血糖値、甲状腺ホルモンの量などを測定します。これらの問診内容や検査結果から、動悸の原因を総合的に判断します。

動悸の治療法

動悸はすべてが治療を必要とするわけではありません。心電図などで問題のない動悸と診断された場合は症状が強くない限りそのまま様子をみることもあります。

不整脈が原因で治療が必要な場合は以下のような治療があります。

• 内服薬
• カテーテルアブレーション 血管から心臓まで管を通して、不整脈の原因になっている部分を焼く。
• 電気的除細動 一部の不整脈では電気的にリセットするために、体外から電極をあてて電気ショックを与えます。意識がある人は静脈麻酔をかけて行います。すぐに効果があらわれ、ほかの症状がなければ入院も不要です。
• ペースメーカー 一時的な治療であれば皮膚の表面に電極を貼って電気を管理・発生させます。長期の治療が必要な場合は血管内を通して心臓に電線を留置し、本体を胸の皮膚の下に埋め込みます。

動悸を感じる方の日常生活の注意点

動悸は経過観察でよいものから緊急に治療を要するものまで様々です。普段から動悸の症状を感じる方は、一度、受診しておいた方が安心でしょう。また、心配のない動悸であっても症状を感じる方は、日常生活で次の点に注意しましょう。

１．動悸を感じたら、楽な姿勢になって発作が治まるかどうか、一時的に様子を見てみましょう。
２．普段から脈の測り方を練習しておき、異常を感じたときはチェックする習慣をつけましょう。
３．緊張や怒りを感じたときは深呼吸をしてリラックスするようにしましょう。
４．カフェインやアルコールは自律神経を刺激して脈を速くします。ほどほどにしておきましょう。
５．タバコに含まれるニコチンは自律神経に作用して脈を速めます。必ず禁煙しましょう。